翻訳者のための青色申告(6) – 申告後の書類保管と次年度の作業

 

2016-03-08 13.06.26

この2週間、当ブログのアクセス数がいつもの倍ぐらいあったので、申告される方が見てくださっているのかなと思っていました。ありがとうございます。初めての青色申告、無事終わられましたか?ずっと白色申告されてきた方にとってはさほど難しくはなかったかもしれませんが、困ったこと、悩んだこともあったのではないかと思います。1年たつとまた忘れてしまうので、気がついたことはメモしておくと来年助かります。私の手元には最初の頃のメモがまだ残っていますが、今でも役に立つことがあります。

 申告後の作業 – 書類の保管

提出した申告書、決算書等の控えはもちろん、帳簿(私は総勘定元帳を印刷しています)、領収書や通帳などは原則として7年間の保管が義務付けられています。

国税庁サイト「記帳や帳簿等保存・青色申告

ここを見ると、データのみで保管したい場合は届出が必要です。

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翻訳勉強会十人十色

JTF

翻訳勉強会十人十色

2012年から仲間と一緒に翻訳勉強会を主催しています。普段はFacebookグループで情報交換をしていますが(メンバーは約500名)、年に何度かリアルの勉強会やセミナーを開催し、翻訳者同士助け合い、また研鑽を重ねています。

3月4日にリリースされた日本翻訳連盟のJTFジャーナル最新号に、会が始まったきっかけや、会の趣旨、これまでの活動、今後の展望などについて、寄稿しました。

また、今号の特集は「機械翻訳の国家戦略」です。ご興味のある方はぜひのぞいてみてくださいね。

翻訳勉強会十人十色紹介記事

最新号目次

 

翻訳者のための青色申告(5)- 現金主義と発生主義

2014-03-17 12.48.06

もう2月も半ばですね。支払調書は揃いましたか? 私は取引先の数が多いので毎年なかなか揃いません。発行期限は1月末ですので2月下旬になっても届かない場合は問い合わせてみましょう。昨今はPDFをダウンロードリンクをメール送付される会社もあります。また、金額が5万円未満の場合支払調書の発行が義務ではないらしく、出さない会社もあるようです。

現金主義と発生主義

送られてきた支払調書の合計金額と自分で会社別に後継した金額と食い違うことはよくあります。「現金主義」で計算している会社があるからです。かといって発生主義で計算し直して欲しいなどとお願いはできないです。また、白色申告でも青色申告でも、基本的に発生主義で計上する必要があるので相手の現金主義に合わせることはできません。

そういう場合や支払調書が発行してもらえなかった場合実際の金額を入れる、しかありません。私は帳簿とは関係なく、支払調書に記載された源泉税の合計を確定申告書に記入していましたが、それで問題はありませんでした。

ところで現金主義と発生主義とはどういう意味でしょうか。
発生主義とは、現金の収入や支出が発生した時点には関係なく、収入や支出の事実が確定した日の日付けで計上する方法です。要するに請求書を起こした日の売上げになります。
現金主義とは現金の収入や支出があった日の日付けで記帳する方法を指します。つまり支払いがあった時点で計上する方法です。

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一太郎2016を活用しよう – 校正、読み上げ、辞書引きツールタブレット

2013-02-25 12.59.19

一太郎は絶滅危惧種?

一太郎なんて買って何するの?と聞かれることも多いですが、私が最初一太郎を購入したのは、JustRight!の簡易版的な校正機能が付いていたからです(ATOKも搭載)。5万円以上するJustRight!5 Pro(ただし一太郎2016発売記念価格で2月19日まで29695円)と比べたらはるかに買いやすい価格で手に入ります(希望小売価格21600円/優待価格9040円)。

JustRight!は高すぎて手が出ないという方は一太郎を買うという選択肢があります。

またプレミアム版だとプレミアム辞書や「詠太」という読み上げソフトも付いています。私は納品前のデータを詠太に読み上げさせてチェックしています。

JustRight!5 Proとの相違点

JustRight!5 Proの 校正機能については、以前このブログで紹介しました。
校正作業を楽に-文書校正支援ツール Just Right!5 Pro
基本的な機能は同じですが、JustRight!5 ProはWordだけではなくExcel、PowerPoint、PDF、Outlookなどの校正ができます。また、基本的にソフトウェアでデータを開くので、テキストデータだけが抽出されて表示されます。

一方一太郎で校正できるのはWordデータだけです(docデータのみ。docxには非対応))。またJustRight!5 Proでは校正辞書を追加できましたが、一太郎ではできません。

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ATOK2016新機能とATOKのおさらい

2013-02-07 13.03.27

ATOK2016新機能:イミクル

ATOK2016の一番の目玉はイミクル。エディタやHPで調べたい用語を選択しCtrlキーを2度押しする(設定変更可能)とATOK連携電子辞典が引けるようになりました。しかもATOK2016のプレミアム版を購入すると、「精選版日本国語大辞典」と「ジーニアス英和第5版/和英第3版」が付いてくるのです。引いたところはこんな感じです。

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イミクルを常駐させて辞書ブラウザのように使うこともできます。ATOKのメニューバーからATOKイミクルを選択すると次のような画面が出ます。

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欠点はどちらの画面も、常に画面の最も上に来てしまうので作業の邪魔になること、すべてのソフトで使用できるわけではないことです(例えば私の使っているCATツールTransitではCtrlキーの2度押しではイミクルが起動しません。Trados Studioでは使えるようです)。

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実践的アプローチによる独日実務翻訳セミナーⅢ

2012-12-01 13.47.01

 

年に1回のペースですが、翻訳学校でドイツ語実務翻訳のセミナーを行っています。

第3回は来年1月30日です

実践的アプローチによる独日実務翻訳セミナーⅢ 

すばやく見つける専門用語/翻訳に赤字を入れて自分の欠点を見つけ出そう

2016年1月30日(土)13:00~17:00

<前半:専門用語の見つけ方>
前々回のセミナーでも、自分の専門ではない分野のお仕事でも違和感のない専門用語の見つけ方をやりましたが、今回は実際に教室のパソコンを使ってできるだけスピーディに専門用語を見つけ、しっかり裏をとる練習をしましょう。

<後半:訳文の質を向上させる>
数ヶ月前に、あるいは数日前に自分で訳した文章を見て、おかしな訳文に冷や汗をかいたことのない翻訳者はいないでしょう。特に初心者の場合、翻訳を終えた直後はなかなか自分の訳文を客観的に見ることができません。今回はワークショップ形式で、講師が用意した訳文に参加者全員で赤字を入れていきます。陥りやすい間違いや読みにくさの原因をさぐり、ご自分の欠点を発見してください。

<セミナーのポイント>
・専門用語をすばやく見つける方法
・見つけた用語の裏をとる方法
・人の訳文に赤字を入れることで、自分の訳文も客観的に見られるようにする
・ドイツ語のロジックを日本語にかみ砕く方法を学ぶ

プレスリリース

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Google KeepとMindMeister

 

2012-10-02 16.57.44

 

今日は普段私が仕事やブレスト、文章を書くときなどに便利に使っているアプリ、Google KeepとMindMeisterをご紹介します。簡単に言うとGoogle Keepはメモ/付箋アプリ、MindMeisterはマインドマップ作成アプリです。 

メモアプリGoogle Keep

会社に勤めていた頃は、ちょっとしたメモはPCまわりに付箋を付けたりデスクトップにフォルダを作ってフォルダ名をメモ内容にして付箋がわりにしたりしていたのですが、今はGoogle Keep を使っています。PC上で一覧できるし、スマホやタブレットとも同期できるのでとても便利です。

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『翻訳者の目線』2015

2015-10-07 10.23.54

 

日本翻訳者協会が2012年から「世界翻訳の日」に発行しているアンソロジー『翻訳者の目線』。私も毎年寄稿しています。こうして並べてみると年々厚みが増していますが、寄稿されている皆さんの翻訳にかける情熱もますます熱いですよ。

私はというと、そんな話ばかりでは読む方もしんどいかな、と毎年ちょっと外れたことを書いています。

今年はシーラッハの『コリーニ事件』について書きました。PDFでどなたにもお読みいただけます。自分の掲載文のみこちらにも掲載しました。

『翻訳者の目線』2015((こちらからDLできます)

翻訳の外側で

ここ数年、ミステリーはヨーロッパが熱い。フランスの『その女アレックス』(ピエール・ルメートル)は記憶に新しいが、「このミステリーがすごい!2015」海外部門第1 位など、名だたる賞を総なめし、史上初の6 冠達成だそうだ。また北欧ミステリーも、独特の雰囲気と登場人物の名前が似ている上になじみがなく覚えきれない(!)ことでミステリー好きを喜ばせている。スウェーデンの『ミレニアム』(スティーグ・ラーソン)、デンマークの『特捜部Q』(ユッシ・エーズラ・オールスン)など、どちらもシリーズ化されており、マイナー言語の翻訳者にとってもうれしいブームとなっている。

そして快進撃が止まらないのが今やドイツミステリーの代名詞となったフェルディナント・フォン・シーラッハ。この1 月に4 作目『禁忌』の邦訳が出版され、6 月には日本で舞台化までされている(世界初演)。私の周りでも、第1 作『犯罪』、第2 作『罪悪』の人気は高い。ところがいかんせん、第3 作『コリーニ事件』の評判は今ひとつである。ナチスの戦犯問題を扱った、なんだかめんどくさくて暗い話、という印象が先立っているように思う。本国ドイツでは、邦訳が出た時点ですでに35 万部を突破しているというのに。

著者がドイツで有名な弁護士であることを知る人も多くはないが、いったいどれくらいの人が日本でシーラッハという名にピンとくるだろうか。名字に「フォン」がつくから貴族の出(とは限らないが)、なんてことではない。彼の祖父はニュルンベルク裁判で禁固20 年の刑に処されたナチ党全国青少年指導者バルドゥール・フォン・シーラッハなのだ(ちなみに祖母はナチ党専属写真家ハインリヒ・ホフマンの娘)。刑期満了で釈放されたとき著者は2 歳。10 歳で良家の子女が学ぶ寄宿学校に入学した。ある日教室で開いた教科書に祖父の写真が載っており、その時初めて、「かつて毎日のように一緒に散歩したおじいちゃんの過去」を知ったという。『コリーニ事件』の訳者あとがきで酒寄進一さ
んも書かれているが、同じクラスや学年に、ヒトラー内閣外務大臣ヨアヒム・フォン・リッべントロップ、軍需大臣アルベルト・シュペーア、ヒトラー暗殺計画の失敗で処刑されたクラウス・フォン・シュタウフェンベルク伯爵、同エルヴィン・フォン・ヴィッツレーベン、同フェルディナント・フォン・リューニックの孫や孫娘がいたという。かつての呉越が同舟、すべて教科書に載っている人たちである。王室のないドイツで、ナチスへの関与とは無関係にこのような階層が存在し、子息が通う学校まであることに、私は心底おどろいた。

著者インタビューでシーラッハは「私の名前は私生活では何の意味も持たなかった」と語っている。裏を返せば、公的な仕事においてはその名前が影響したということになる。小説でも法廷でも、シーラッハは一貫して「法とは何か」、「罪とは何か」ということを静かに問い続けている。その中には祖父の罪も、そのような祖父を持った自分に何ができるのかという問いも、含まれているにちがいない。

おどろくような話はこれだけではない。ネタバレになってしまうが、『コリーニ事件』では時効に関してナチス戦犯に有利になる法の不備が暴かれている。そしてこの本がベストセラーとなり、出版後わずか半年で、ドイツ連邦法務省にこの法の不備を検討する調査委員会が立ち上げられたのだ。弁護士兼小説家の真骨頂、ドイツ国民も法務省もあっぱれ、である。小説で政治が動き、法律が書きかえられる、作り話のような本当の話なのだ。

それにくらべて、祖父がA 級戦犯被疑者として1 度は巣鴨プリズンにつながれたわが日本の首相たるや…と泣言を言いたいわけではない(いや、言いたいが)。歴史的背景を知ることで、日本では残念ながら人気のないこの作品も俄然おもしろくなりませんか、と自分が愛してやまないこの本を皆さんにお薦めしたいのだ。ふりかえって自分の仕事はというと、普段私が訳しているのは小説ではなく取扱説明書や特許明細書だが、時折社史の翻訳なども仰せつかる。ドイツ企業が偉いのは社史にもナチスとの関わりを明記していることだ。あたりさわりのない記述に終始している場合ももちろん少なくないが、良いことも悪いことも、こんなに書いてしまっていいのかしら、と思うほど詳細に記されていて、手に汗握るドラマがあり、翻訳はそっちのけで読みふけった本もあった。ドイツは企業レベルでも過去を隠さず「罪を認め、公(おおやけ)にする」ことが正義である社会だと思う。残念なことに、せっかく訳しても(しかもおもしろいのに)、日本語版ではその部分が割愛されてしまうこともあるのだが。

 

『翻訳者の目線』2012~2014 ブログ記事

『翻訳者の目線』2016ブログ記事

『翻訳者の目線』2017ブログ記事

LogoVista南山堂医学大辞典20版

 

南山堂医学大辞典は10年近く19版をJammingという辞書ブラウザ(販売終了)で使っていたのですが、待望の20版がLogoVistaから出たので購入ました。(南山堂の紙の辞書のHPはこちら

他の辞書ブラウザには非対応

最初に書いておきますが、この辞書は辞書ブラウザLogophile(シェアウェア)やJammingに辞書として登録はできますが、残念ながら検索はできませんでした。というかヒットしますが本文は表示されません。Logophile側の対応が進まないかぎり、研究社のコロケーション辞典以降に発売されたLogoVista辞書は付属のLogoVistaブラウザを使うしかないことがはっきりしました。

 Logophileではインデックス作成時に「全文検索」にチェックを入れましたが、検索をかけても数字が表示されるだけです。(Jammingでも同じ)

homeo

 

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十人十色広島編・大阪編2015

2013-05-21 13.04.37

 

7月に東京で行った勉強会については以前このブログのEvernote活用法の記事で少し触れましたが、10月に広島(1日)と大阪(2日)でも同じ形式で開催します(2013年に続き2回目)。

学び合いの場として

どんなお仕事もそうだと思いますが、翻訳もプロであり続けるには常に勉強が必要です。セミナーに通ったり本を読んだり、方法はいろいろですが、同業者同士が互いに自分のやり方を見せて学び合うというのも思いがけない効果があります。自分が当たり前と思ってやっていることが他の人には新鮮だったり、自分がいつも困っていることを別の人がいとも簡単に解決していたり、目からウロコが落ちること落ちること。さらには普段あまり会うことのない翻訳者同士のつながりもできますし、自分の立ち位置や進むべき道が見えてきたりもします。

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