翻訳勉強会十人十色

JTF

翻訳勉強会十人十色

2012年から仲間と一緒に翻訳勉強会を主催しています。普段はFacebookグループで情報交換をしていますが(メンバーは約500名)、年に何度かリアルの勉強会やセミナーを開催し、翻訳者同士助け合い、また研鑽を重ねています。

3月4日にリリースされた日本翻訳連盟のJTFジャーナル最新号に、会が始まったきっかけや、会の趣旨、これまでの活動、今後の展望などについて、寄稿しました。

また、今号の特集は「機械翻訳の国家戦略」です。ご興味のある方はぜひのぞいてみてくださいね。

翻訳勉強会十人十色紹介記事

最新号目次

 

実践的アプローチによる独日実務翻訳セミナーⅢ

2012-12-01 13.47.01

 

年に1回のペースですが、翻訳学校でドイツ語実務翻訳のセミナーを行っています。

第3回は来年1月30日です

実践的アプローチによる独日実務翻訳セミナーⅢ 

すばやく見つける専門用語/翻訳に赤字を入れて自分の欠点を見つけ出そう

2016年1月30日(土)13:00~17:00

<前半:専門用語の見つけ方>
前々回のセミナーでも、自分の専門ではない分野のお仕事でも違和感のない専門用語の見つけ方をやりましたが、今回は実際に教室のパソコンを使ってできるだけスピーディに専門用語を見つけ、しっかり裏をとる練習をしましょう。

<後半:訳文の質を向上させる>
数ヶ月前に、あるいは数日前に自分で訳した文章を見て、おかしな訳文に冷や汗をかいたことのない翻訳者はいないでしょう。特に初心者の場合、翻訳を終えた直後はなかなか自分の訳文を客観的に見ることができません。今回はワークショップ形式で、講師が用意した訳文に参加者全員で赤字を入れていきます。陥りやすい間違いや読みにくさの原因をさぐり、ご自分の欠点を発見してください。

<セミナーのポイント>
・専門用語をすばやく見つける方法
・見つけた用語の裏をとる方法
・人の訳文に赤字を入れることで、自分の訳文も客観的に見られるようにする
・ドイツ語のロジックを日本語にかみ砕く方法を学ぶ

プレスリリース

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『翻訳者の目線』2015

2015-10-07 10.23.54

 

日本翻訳者協会が2012年から「世界翻訳の日」に発行しているアンソロジー『翻訳者の目線』。私も毎年寄稿しています。こうして並べてみると年々厚みが増していますが、寄稿されている皆さんの翻訳にかける情熱もますます熱いですよ。

私はというと、そんな話ばかりでは読む方もしんどいかな、と毎年ちょっと外れたことを書いています。

今年はシーラッハの『コリーニ事件』について書きました。PDFでどなたにもお読みいただけます。自分の掲載文のみこちらにも掲載しました。

『翻訳者の目線』2015((こちらからDLできます)

翻訳の外側で

ここ数年、ミステリーはヨーロッパが熱い。フランスの『その女アレックス』(ピエール・ルメートル)は記憶に新しいが、「このミステリーがすごい!2015」海外部門第1 位など、名だたる賞を総なめし、史上初の6 冠達成だそうだ。また北欧ミステリーも、独特の雰囲気と登場人物の名前が似ている上になじみがなく覚えきれない(!)ことでミステリー好きを喜ばせている。スウェーデンの『ミレニアム』(スティーグ・ラーソン)、デンマークの『特捜部Q』(ユッシ・エーズラ・オールスン)など、どちらもシリーズ化されており、マイナー言語の翻訳者にとってもうれしいブームとなっている。

そして快進撃が止まらないのが今やドイツミステリーの代名詞となったフェルディナント・フォン・シーラッハ。この1 月に4 作目『禁忌』の邦訳が出版され、6 月には日本で舞台化までされている(世界初演)。私の周りでも、第1 作『犯罪』、第2 作『罪悪』の人気は高い。ところがいかんせん、第3 作『コリーニ事件』の評判は今ひとつである。ナチスの戦犯問題を扱った、なんだかめんどくさくて暗い話、という印象が先立っているように思う。本国ドイツでは、邦訳が出た時点ですでに35 万部を突破しているというのに。

著者がドイツで有名な弁護士であることを知る人も多くはないが、いったいどれくらいの人が日本でシーラッハという名にピンとくるだろうか。名字に「フォン」がつくから貴族の出(とは限らないが)、なんてことではない。彼の祖父はニュルンベルク裁判で禁固20 年の刑に処されたナチ党全国青少年指導者バルドゥール・フォン・シーラッハなのだ(ちなみに祖母はナチ党専属写真家ハインリヒ・ホフマンの娘)。刑期満了で釈放されたとき著者は2 歳。10 歳で良家の子女が学ぶ寄宿学校に入学した。ある日教室で開いた教科書に祖父の写真が載っており、その時初めて、「かつて毎日のように一緒に散歩したおじいちゃんの過去」を知ったという。『コリーニ事件』の訳者あとがきで酒寄進一さ
んも書かれているが、同じクラスや学年に、ヒトラー内閣外務大臣ヨアヒム・フォン・リッべントロップ、軍需大臣アルベルト・シュペーア、ヒトラー暗殺計画の失敗で処刑されたクラウス・フォン・シュタウフェンベルク伯爵、同エルヴィン・フォン・ヴィッツレーベン、同フェルディナント・フォン・リューニックの孫や孫娘がいたという。かつての呉越が同舟、すべて教科書に載っている人たちである。王室のないドイツで、ナチスへの関与とは無関係にこのような階層が存在し、子息が通う学校まであることに、私は心底おどろいた。

著者インタビューでシーラッハは「私の名前は私生活では何の意味も持たなかった」と語っている。裏を返せば、公的な仕事においてはその名前が影響したということになる。小説でも法廷でも、シーラッハは一貫して「法とは何か」、「罪とは何か」ということを静かに問い続けている。その中には祖父の罪も、そのような祖父を持った自分に何ができるのかという問いも、含まれているにちがいない。

おどろくような話はこれだけではない。ネタバレになってしまうが、『コリーニ事件』では時効に関してナチス戦犯に有利になる法の不備が暴かれている。そしてこの本がベストセラーとなり、出版後わずか半年で、ドイツ連邦法務省にこの法の不備を検討する調査委員会が立ち上げられたのだ。弁護士兼小説家の真骨頂、ドイツ国民も法務省もあっぱれ、である。小説で政治が動き、法律が書きかえられる、作り話のような本当の話なのだ。

それにくらべて、祖父がA 級戦犯被疑者として1 度は巣鴨プリズンにつながれたわが日本の首相たるや…と泣言を言いたいわけではない(いや、言いたいが)。歴史的背景を知ることで、日本では残念ながら人気のないこの作品も俄然おもしろくなりませんか、と自分が愛してやまないこの本を皆さんにお薦めしたいのだ。ふりかえって自分の仕事はというと、普段私が訳しているのは小説ではなく取扱説明書や特許明細書だが、時折社史の翻訳なども仰せつかる。ドイツ企業が偉いのは社史にもナチスとの関わりを明記していることだ。あたりさわりのない記述に終始している場合ももちろん少なくないが、良いことも悪いことも、こんなに書いてしまっていいのかしら、と思うほど詳細に記されていて、手に汗握るドラマがあり、翻訳はそっちのけで読みふけった本もあった。ドイツは企業レベルでも過去を隠さず「罪を認め、公(おおやけ)にする」ことが正義である社会だと思う。残念なことに、せっかく訳しても(しかもおもしろいのに)、日本語版ではその部分が割愛されてしまうこともあるのだが。

 

『翻訳者の目線』2012~2014 ブログ記事

『翻訳者の目線』2016ブログ記事

『翻訳者の目線』2017ブログ記事

2014年までに寄稿した翻訳関係のエッセイなど

JATアンソロジー「翻訳者の目線」

日本翻訳者協会では3年前から世界翻訳の日(9月30日)に会員によるアンソロジー「翻訳者の目線」を刊行しています。私も毎年寄稿しています。PDFでお読みいただけます。2014年版。2013年版の自分の記事をこちらにも掲載しました。

2014年版 (25ページ)

「辞書を読む」

正式名DEUTSCHES WÖRTERBUCH VON JACOB GRIMM UND WILHELM GRIMM、通称「グリムのドイツ語辞典」をご存じだろうか。童話で有名なあのグリム兄弟が編纂を開始した辞書である。兄弟が着手したのが1838年、途中で二人が亡くなり、後を引き継いだ人たちの手で終巻が配本されたのが1961年、全16巻33冊の壮大な仕事だ。依頼した出版社は当初、ドイツの家庭に広まったグリム童話のように一家に一冊の辞書を目指したらしいが、その思惑は大きく外れた。けれどもグリム兄弟は民衆の言葉である方言や民間伝承、しきたりや習慣を重んじ、当時の生きた言葉も辞書の中に多く取り入れている。弟ヴィルヘルム亡き後、残されたヤーコプが最後に取りかかった用語は「Frucht」であるといわれている。果物を意味するこの項目の本文の途中には注がつけられ、「この語をもってヤーコプ・グリムは永遠に筆を置いた」と書かれている。そのような注がつけられた辞書を、私は他に知らない。

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2013年と2014年に独日翻訳セミナーの講師をつとめました

昨年、一昨年と、翻訳学校で半日の独日翻訳セミナーの講師をつとめました。過去のセミナー内容は学校のホームページからは削除されてしまっため、こちらに一部内容を掲載します。初めての経験でしたが、受講生の皆さまとワークショップを行い、私自身も大変勉強になるセミナーとなりました。

実践的アプローチによる独日実務翻訳セミナーI

~幅広い分野に対応するコツ~

(2013年6月15日、サンフレアアカデミー)

 (内容)

仕事が多く専門分野を絞って仕事を受けることのできる英語とは異なり、独和翻訳では比較的幅広い分野をカバーしながらさまざまな種類の文書を翻訳することが多くなっています。得意としていない分野でも専門家が読んで違和感のない翻訳を心がけなければなりません。また、プレスリリースや取扱説明書のように読みやすさが求められるものから技術文書のように正確さが重視される文書まで、さまざまな文書を頭を切り換えながら翻訳しなければなりません。さらに、英語のように親切な文法書や翻訳指南書がないためにおろそかになりがちな文法上の要点、独和の専門辞書がほとんどない現状で効率的に用語を探す工夫、文書によって異なる翻訳の注意点など、例文を訳しながら学びます。

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2014年までに講師をつとめた翻訳者のための節税・運用セミナー等

「フリーランスでも安定した生活を ~節税と資産運用に国の制度を徹底利用~」

(2012年10月、日本翻訳連盟翻訳祭)

概要:

翻訳業界は厳しい時代が続いている。翻訳関連のセミナーや講演等でも、目につくのはいかに翻訳単価を上げて効率化を図るかというテーマだ。しかし可処分所得を増やすためには節税という観点も欠かせない。むやみに経費を増やすのではなく、国の制度を利用して簡単にできる節税法は意外と知られていない。またフリーランスという不安定な職業を少しでも安定したものにするためには資産形成と運用が不可欠だと思うが、残念なことに運用なんて怖い、無理だと考えている方が少なくない。これから開業する方または開業して間もない方を対象に、経験に基づいた効率的な方法をご紹介する。

◎フリーランスは売上げの2~3割が税金に消えていくことをご存じですか?

◎フリーランスは毎月の収入が安定せず不安に感じていませんか?

◎フリーランスは会社員に比べて年金が少ないことが心配ではありませんか?

◎フリーランスに退職金はないとあきらめていませんか?

◎フリーランスが節税しながら運用できる国の制度をご存知ですか?

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