今年から青色申告に切りかえた方はそろそろ記帳指導が始まる頃ですね。最初は何が経費にできるのか、どの費目に仕分けたらいいのか、というようなことで悩まれると思いますが、記帳指導で相談できるので安心です。このブログではもう少し全体を見たいと思います。
売上と経費のバランス
経費はいくらぐらいまで認められるのでしょう。私が以前お話をうかがった複数の税理士さんは、だいたい売上の1/3から半分までなら問題ないとおっしゃっていました。目安として国税庁HPで給与所得控除を見てみると、例えば給与所得が3,600,000円~6,600,000円で収入金額×20%+540,000円となっています。個人事業主は交通費や交際費も自前なので、これよりも多少多くてもよいのではないでしょうか。
売上げが増えても、経費はそのうち頭打ちになります。私の場合どんなにがんばっても150万から250万程度です。経費といっても自分のお金ですので、節税のためだから、とむやみに使うと自分のお金がなくなります。それよりも別の手立てを考えましょう。
使っていない「控除」がないか確認する
子ども手当が支給される16歳未満の子供の扶養控除は廃止されましたが、お子さんがその年の12月31日現在16歳以上である場合は扶養控除の対象になり(38万円)、さらに19歳以上23歳未満だと特定扶養親族で控除額は63万円になります。また老人扶養親族(70歳以上)は同居している場合(58万円)だけでなく同居していなしていない場合(48万円)でも、他に扶養している人がいない場合は控除の対象になります。扶養控除や寡婦控除を税理士さんに忘れられたという方が私の周囲で2人もおられます。プロでもうっかりするのですから、自分に該当する控除がないか十分検討しましょう。
所得税額控除一覧はこちら
扶養控除の詳細についてはこちら
★注意したいのは所得税と地方税で控除額が異なることです。例えば所得税で全額還付になっても地方税はかかる場合があります。
★扶養配偶者がおられる場合は可能なら専従者にして節税する方法があります。またご夫婦で翻訳者である場合は法人化して『税金が一番少なくなるように計算して2人に給与を出す』ことも考えられます。
★確定申告書類を作成するときに扶養している子供や親をの生年月日の入力が必要な会計ソフトでは、一度入力すると、自動的に扶養金額を表示してくれます(特定扶養親族への移行も自動、ただしソフトを毎年更新する必要あり)。
昨年度の売上に基づいて節税を計画する
昨年度の売上が400万円、今年も同額になると仮定して計画してみましょう。経費が100万円、生活費が240万円、貯金60万円として考えます。
売上から経費を除いた額が事業所得で、この場合は300万円です。
控除額を計算すると
青色申告特別控除 65万円
基礎控除 38万円
国民年金掛金 18万円
国民健康保険税 24万円(例)
合計控除額 145万円
これに例えば特定扶養親族控除が63万円と生命保険控除が10万円あるとすると控除額合計は218万円、課税所得は82万円です。
ここで、もし手元の預貯金に余裕がある場合、年間の貯金額60万円からいくらか節税対策に回すことを考えましょう。
小規模企業共済 - フリーランスの退職金
小規模企業共済は、個人事業主が廃業したときなどに積み立てておいたお金を一時金として(または分割で)受け取ることができる国の制度です。掛金は全額控除になり、月額最大7万円、年額84万円までかけることができます。貯金予定の60万円から月額2万円、年額24万円をかけると、課税所得は58万円、還付金はおよそ34万円になります。
来年度この還付金で例えば国民年金を年払いにすると4000円近く納付金が安くなります。
また小規模企業共済は掛金の金額を年1回に限り変更できるので、売上が予想より大幅に増加した場合、12月に年払いに変更して最大84万円を払い、控除額を増やすこともできます。
このような掛金は売り上げが不安定なフリーランスにとっては払い続けられるかどうかが心配なものですが、還付金をプールしておくなどして手元に予備のお金をおいて調整しましょう。毎年12月に支払える金額/必要な控除額に金額を変更して年払いするのも合理的です
さらに厚生年金に相当する国民年金基金(こちらは現在あまりお薦めしません)や個人型確定拠出年金も掛金が全額控除になります。DCと呼ばれる個人型確定拠出年金については、また別の機会にご紹介しますね。
このように、おおよその売上とその割り振りを考えておくと、たとえ計画通りに行かなくても、前もって準備ができるので「節税もれ」を防止できます。そういう意味でも毎月きちんと記帳しましょう(<–自戒も込めて)。
翻訳者のための青色申告(6) – 申告後の書類保管と次年度の作業