本屋さんへ行こう!シリーズ2「ひと月限りの<ぽえむ・ぱろうる>(リブロ池袋本店)」

 

今年3月初め、リブロ池袋本店が閉店するというニュースは私たち翻訳者仲間を驚かせました。本店に思い出のある方も多く、惜しむ声をあちこちで聞きました。私も学生時代に通った本屋さんなので閉店までに一度は、と思っていたところ、Twitterで「ひと月限りの<ぽえむ・ぱろうる>」(6月1日~リブロ閉店まで)という企画があることを知り、さっそく訪ねてみました。 

リブロと思潮社のタッグ

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1975年~2006年まで西武ブックセンター/リブロの一角にあった「ぽえむ・ぱろうる」は、実は「現代詩手帖」を出している思潮社が出店していたのだそうです。私も80年代によく通いましたがとっくに絶版になっているはずの詩集が並んでいた理由が今になってわかりました。今回もリブロからの提案で協力されています(思潮社HP)。私がお話をうかがっている時も思潮社の方が補充用の本を持ってこられていました。 

思潮社の2枚看板「現代詩手帖」と「現代詩文庫」

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第一期の現代詩文庫がこんなにたくさん並んでいるのを見て思わず「なつかしい」と口走ってしまいました。詩集は発行部数が少ない上に自費出版などで手に入りにくいことも多かったので、廉価で一流詩人の詩が読める文庫は画期的でした。

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「現代詩手帖」のバックナンバーは古いものから売れていくとのことでしたが、こうしてみると「ニュートランスレーション-翻訳の詩学」、「北欧現代詩と出会う」など、最近の号にも興味深い特集が!(写真を拡大して見てくださいね)

そして誰もが知っている現代詩の双璧、谷川俊太郎と大岡信。渋谷のぱろうるだったかも知れませんが、当時お二人の朗読会に行った覚えがあります。

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企画された辻山さん

お話をうかがった本店マネージャーの辻山良雄さんは、閉店を惜しむ声に背中を押されてこの企画を思いついたそうです。「閉店が決まるとお祭りのような雰囲気になるものですが」、初日から予想以上に反響が大きく、当時を知る方だけでなく若い方も多いとのこと。「若い詩人も出てきていますし、普段人に話したりはしないけれど詩が好きだという人は案外多いのだなとあらためて感じました。また池袋リブロの持っている雰囲気を惜しんでくださる方も少なくありません」。私は6月2日に下見にでかけ、4日に写真を撮らせていただいたのですが、たった2日でもずいぶん本が入れ替わっていました。毎日補充が必要だそうです。もちろん「当時の棚を短期間で完全に再現することは難しい」とのことですが、私は詩集を眺めながら、忘れていた心の中の「詩」の部分が目覚める感覚が新鮮でした。

 詩集の他にもダダイズムやシュールレアリスム、暗黒舞踏(いまNHK「まれ」で異彩を放っている田中泯さんの本もありました)、澁澤龍彦、久世十蘭など、当時の空気を醸し出す本が並んでいます。

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分野別、専門別、お薦めの本、という棚割だけではなくこういう切り口で本に遭遇する喜び、再会する驚きがありますね。辻山さんも、書店で思いがけない出会いを楽しんでいただけたら、とおっしゃっていました。

 本棚から見る、リブロ池袋本店の40年

ぱろうるは2Fですが、1Fではやはり辻山さんが企画された「本棚から見る、リブロ池袋本店の40年」が展開されていました。詳しい年表が展示され、あんな本を読んでいた、これは知らなかった、と時を忘れました。ぜひ時間の余裕をもって見に行ってくださいね。

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堤清二/辻井喬 パネル展

私は80年代セゾン文化にどっぷり漬かっていた世代ですが、西武美術館やアール・ヴィヴァン、ミュージック・トゥデイ、シネ・ヴィヴァンなどと並んで採算は度外視だったと思われる「ぱろうる」のような希有な書店が長く続いたのは辻井喬が詩人だったからこそでしょう。

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伝説の「今泉棚」は

「ぱろうる」の元書店員さんたちは今でもお互いにつながりがあるそうで、中にはユニークな古書店を経営されている方もおられるとか。またセゾンと言えば伝説の書店員今泉正光さんの「今泉棚」。私はきっとその棚を見ていたと思うのですが当時は書店員さんにまで思いが及びませんでした。ただ、リブロは個性がはっきりしていて本屋巡りが楽しかった記憶はあります。「本棚から見る、リブロ池袋本店の40年」のコーナーにはやはりリブロ出身で今はジュンク堂池袋店の副店長、田口久美子さんの「書店風雲録」が平積みされていました(太っ腹)。もしリブロ池袋本店が別の場所で新装開店されたら、ぜひ今泉棚を再現していただきたいものです。

 

インゲボルク・バッハマン全詩集と伊藤比呂美「河原荒草」

今回買った本。なんだかんだ言ってやっぱりドイツ語関係は外せない私でした。

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こちらは持っているはずなのですが、実家の蔵の中(!)なのでつい買ってしまいました。

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閉店までにまた池袋に行って、現代詩手帖や、まだ読んだことのない蜂飼耳詩集、三角みづ紀詩集(両方現代詩文庫)なども買いたいなと思っています。

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サービスでもらったしおり(ぱろうるのロゴ入り)と、当時のブックカバーのデザイン。ブックカバーは覚えている方も多いのではないでしょうか。

 

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古書コーナーもありました

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6月22日には、上野千鶴子×高橋源一郎トークイベント「戦後思想七十年の上半身と下半身」 上野千鶴子『思想をかたちにする』『セクシュアリティをことばにする』(青土社)刊行記念も開催されます。

 

やっと第2弾が書けた「本屋さんに行こう」シリーズ。何店か下見に行ってはいるのですが、なかなかピンとこないのです。これぞと思う本屋さんにめぐり合ったらまた書きます。

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